レン鉄★気ままな乗車記

乗り鉄&きっぷ鉄の管理人が、備忘録を兼ねてブログに綴っていきます。

乗り鉄&きっぷ鉄っぽい管理人が、乗り鉄旅行とそこで使用したきっぷを思うがままに記録したブログです。
どうぞ、お付き合いください。
 

HC85系「南紀」に乗車する紀伊勝浦往復乗り鉄旅

 今年も後半に入り、ついに夏がやってきました。「8月に向けて少しずつ暑さが増してくるだろうな〜」と思いきや、真夏日や熱帯夜となる日もあるなど、すでに本格的な夏の陽気となっています。毎年いつも思うことですが、今年の暑さも容赦ありません。今期も例年どおり、夏の乗り鉄旅を楽しんでいきたいと思っていますが、暑さに負けて体調を崩してしまっては元も子もありません。日中はしっかりと水分補給するなどして、熱中症には十分気をつけていきたいと思っています。

 さて、話はがらりと変わりますが、最近、ふと気になったことがあります。それは『名古屋駅から定期列車に乗車して一度も乗り換えることなく到達することができる駅が所在する都道府県って、どのくらいあるのか?』という疑問です。実際はどうなのでしょうか。ちょっと調べてみました。

 上の地図で色塗りした箇所が該当する都府県です。東海道・山陽新幹線に乗車すれば、東京ー福岡間の各都府県を乗り換えなしに訪問することができます。在来線に乗車した場合、東海道本線上り列車では朝と夜に浜松行きがあるため、静岡県まで行くことはできますが、神奈川県や東京都に行くには乗り換えが必要となります。反対の下り列車では米原行きがあるため、滋賀県まで行くことはできますが、京都府大阪府に直通する列車はありません(以前は大阪発着の「しなの」がありましたが、2016年3月のダイヤ改正で運転取り止めとなってしまいました)。

 その他の路線では、中央西線篠ノ井線信越本線を走る「しなの」に乗車することで長野県に、高山本線を走る「ひだ」に乗車することで富山県に、そして北陸本線を走る「しらさぎ」に乗車することで福井県と石川県に、それぞれ訪れることができます。また、見落としがちですが、紀勢本線を走る「南紀」に乗車すれば、三重県だけでなく和歌山県内にも足を踏み入れることができ、愛知県を含めて合計19都府県に行くことができると分かりました。計算上では、47都道府県の約4割をカバーしているということで、思ったよりも多いなというのが正直な感想です。

 しかし、ブルートレインに代表される夜行列車の全盛期には、長崎行の「さくら」、西鹿児島(現鹿児島中央)行の「はやぶさ」、熊本行の「みずほ」、宮崎行の「富士」といった列車があり、名古屋駅からこれらの列車に乗車すれば、乗り換えなしに九州各地を訪れることができた訳ですから、こうした列車の廃止は、人々の行動様式さらには日本の公共交通機関全体に大きな影響を与えるものであったことを、今更ながら実感したところです。

 さて、ここからが本題となりますが、例によって今回も、名古屋駅を発着する列車に乗車して日帰り旅行に出かけることにしました。先述のとおり、名古屋駅から乗り換えなしに到達できる都府県は19ありますが、その中から今回は和歌山県那智勝浦町にある紀伊勝浦までを往復する旅に行ってきました。利用する列車はもちろん特急「南紀」です。「南紀」は過去の乗り鉄旅でも利用していますが、紀伊勝浦発着で乗車したことはありません。今回は「南紀」の全区間に乗車することとし、終点の紀伊勝浦からは世界遺産である熊野那智大社に行ってみることにしました。僕の乗り鉄旅では、久しぶりの和歌山県訪問となります。

 

 

名古屋駅から特急南紀に乗車

 特急「南紀」の始発駅である名古屋駅に来ました。「南紀」に使用される車両は先月末まではキハ85系でしたが、7月1日からはHC85系に置き換えられました。置き換え直後ということもあり、名古屋駅のコンコース内通路には、HC85系をPRするポスターがこれでもかというほど掲出されています。

 名古屋方面から新宮・紀伊勝浦方面までおトクに「南紀」に乗車できる「南紀熊野古道フリーきっぷ」も大きく宣伝されていました。

南紀号で使用されているHC85系:名古屋駅 2023/7/4

 今回乗車するのは「南紀」1号で、名古屋駅の12番線から発車します。

 ちなみにHC85系のデビューは昨年7月で、当初は一部の「ひだ」で運行を開始しました。その後、徐々にキハ85系「ひだ」を置き換えていき、今年3月のダイヤ改正で定期運行されるすべての「ひだ」がHC85系になったところです。「ひだ」は約9か月かけて置き換えを進めていきましたが、「南紀」の場合は一斉にHC85系となりました。

 HC85系の編成には大きく分けて3つのパターンがあり、4両のグリーン車あり編成とグリーン車なし編成、2両のグリーン車なし編成となっています。「南紀」にはグリーン車の設定がないため、4両グリーン車ありの編成が充当されることはなく、基本的には2両編成のHC85系が使用されることになりますが、今回乗車したのは4両グリーン車なしの編成でした。「南紀」としてデビュー間もないということもあり、多客にも対応できるよう4両編成での運行になったのだと思います。1号車のみ自由席で、2号車から4号車までが指定席でした。今日は平日ということで全体的に乗客はまばらで、正直、2両編成でも十分なくらいでした(僕が乗車した4号車も乗客は10人前後でした)。

 よく考えてみると、「南紀」以外にも、名古屋や桑名、四日市から津、松阪に行くには近鉄がありますし、名古屋から新宮までは高速バスもあります。特に高速バスは「南紀」にとって強力なライバルで、「南紀」の普通車指定席を利用した場合のねだんが7,530円(通常期)であるのに対し、三重交通の高速バスは4,200円で、3,000円以上の開きがあります。もちろん所要時間の面では「南紀」の方が優位ですが、これだけねだんに差があると、利用者の一部は高速バスに奪われているものと考えられます。快適な新型車両の投入で「南紀」による“巻き返し”が図られるのか、注目されるところです。

 上の写真は、三瀬谷駅での停車中に撮影したものです。名古屋駅と異なりホーム上に屋根がないため、きれいな青空の下で輝くHC85系を撮影することができました。ちなみに三瀬谷駅は、すべての「南紀」が停車する駅の一つでありながら無人駅となっています。

 三瀬谷駅の次は、紀伊長島駅に停車します。紀伊長島駅では名古屋行の「南紀」4号との行き違いのため、約6分間停車します。この時間を利用して跨線橋の上から駅の全景と停車中のHC85系を撮影することができました。以前公開された『君の名は。』という映画の中に、高山本線の飛騨古川駅が描かれたシーンがあり、鉄道ファンのみならず一般の方にも注目を集めてましたが、今回はそのイメージに重なるような、のどかな雰囲気を写真に収めることができたと思います。

 「南紀」の車内からは、穏やかな海と緑の木々が美しい山々を眺めることができ、車窓に飽きることはありません。こうした風景をゆったり眺めることができるのも、列車旅の大きな魅力の一つだと思います。

 熊野川を渡ると、いよいよ和歌山県に入ります。今日は空色も水色もとてもきれいです。やはり晴天は気持ちいいですね。

 

紀伊勝浦駅に到着

 名古屋駅から「南紀」に乗車すること約3時間50分、終点の紀伊勝浦駅に到着しました。過去に紀勢本線のほぼ全線を乗り尽くす旅をしていますが、その際は新宮駅から特急「くろしお」に乗車したため、紀伊勝浦駅で下車するのは初めてです。降り立った記念に駅舎をパシャリ📸

 駅前には、勝浦温泉と記された石碑と、温泉地でよく見かけるアーチ型の大型看板などがあります。また、那智と言えば那智黒という黒飴が有名で、『那智黒』と書かれたキラキラの看板も目に飛び込んで来ました。ちょっとレトロで懐かしい雰囲気が旅行気分を盛り上げてくれます。

 「南紀」の紀伊勝浦到着は11時56分で、ちょうど昼食にいい時間になったので、ここで昼食をいただいてから、今回の目的地である熊野那智大社に向かうバスに乗車することにしました。

 

お食事処 川柳で鉄火丼

 せっかくの機会なので、那智勝浦らしいものをいただこうと思い調べてみると、やはりマグロ料理が多いようです。ネット情報によると、勝浦漁港は、延縄漁法による生鮮まぐろの水揚げが日本一なんだそうです。ならば駅近くにある飲食店で美味しいマグロを食べてみようということで、今回はお食事処 川柳さんに立ち寄りました。

 昭和テイストの趣きのある店構えです。なお、川柳さんは、紀伊勝浦駅で販売する駅弁を製造しているお店でもあります(僕が探した限りでは、駅構内に駅弁を販売する売店はなかったように思いますが、僕が見落としていたのかもしれません)。川柳さんが製造する「鮪素停育(鮪ステーキ)弁当」は紀伊勝浦駅の名物駅弁なんだそうです。今回は駅弁ではなく、店内で食事させていただくため、お店イチオシの鉄火丼をいただきました。マグロの赤身はモチモチしていて柔らかく、癖のない味で食べやすかったです。やはり地元の名物にハズレはありませんね😊

 

熊野那智大社を訪問

 お腹を満たしたところで、ここからは路線バスに乗車して熊野那智大社に向かいます。熊野那智大社は、熊野本宮大社、熊野速玉大社と並ぶ熊野三山の一社であり、全国各地にある熊野神社の御本社でもある由緒ある社です。今回の旅では、熊野那智大社の御本殿のほか、別宮である飛瀧神社那智御瀧(俗に言う「那智の滝」)、朱塗りが美しい青岸渡寺の三重塔も見学することにしました。

龍神社と那智御瀧

 路線バスに乗車してまず訪れたのは、飛瀧神社那智御瀧です。もう神社に入る前から厳かで神々しい独特な雰囲気が伝わってきます。

 鳥居をくぐると、すでに大量の水が勢いよく滝壺に落ちる激しい音が聞こえてきます。道なりに石畳を進むと、程なくして正面に落差133mという巨大な滝が見えてきました。これがあの有名な御滝です。こんな立派な滝を見るのは初めてです。本当に圧倒されるような存在感です。ちなみにこの御滝は、日光にある華厳の滝、奥久慈の袋田の滝とあわせて日本三名瀑に数えられています。

 また、熊野那智大社の別宮である飛瀧神社は、御滝そのものを御神体として祀っているそうです。社務所付近から眺める御滝の姿も素晴らしいのですが、別に料金を支払えば、より近くにある観覧舞台から御滝を拝観することができます。せっかくここまで来たので、僕も観覧舞台から拝観してみました。

 御滝に近づくと、さらにその迫力が増してきます。自然の雄大さを感じながら、心が洗われるような清々しい気分に浸ることができました。

青岸渡寺 三重塔

 那智御瀧を拝観した後は、青岸渡寺の三重塔を訪れることにしました。手持ちの社殿案内図を見るとそれほど距離は離れておらず、徒歩でも余裕だろうと思って街道沿いにあった階段を登り始めたところ、なかなか辿り着きません😰。石階段で足場も悪く、大きな段差が連続する箇所もあり、途中で心が折れかけました。強い陽射しの中で汗びっしょりになり、途中で引き返すことも考えましたが、何とか気合いで階段と坂道を登りきると、朱塗りの三重塔が見えてきました。

 正直ここに辿り着くまでにかなりの体力を消耗してしまい、塔に入るのもためらうほどでしたが、せっかくここまで来たのだからと思い直して見学することにしました。嬉しいことに塔内にはエレベーターがあり、楽々と最上階まで移動することができました。ここからも御滝の姿を眺めることができます。

 次はいよいよ、御本殿に向かうのですが、とにかく暑さが尋常ではありません。したたるような汗もすごいのですが、あまりの日差しにフラつくような気がしたため、これはマズいと思い、近くの茶店で少し休憩することにしました。

 茶店では、オススメの「もうで餅と水もうで食べ比べセット」をいただきました。これでクールダウンできそうです。写真では分かりにくいですが、お茶は冷やし抹茶です。かき氷のような強烈な冷たさではないため、身体に優しい感じがします。店員さんがお餅の説明をしてくれましたが、忘れてしまいました😓

熊野那智大社 礼殿

 少し休憩したところで体力を回復し、いよいよ礼殿に向かいます。またまた階段を登ることになりますが、三重塔に行くまでの石階段と比べれば、こちらの方が楽に移動できます。

 途中にはきれいな手水鉢がありました。心癒されます。

 階段を登りきったところで礼殿に辿り着きました。先ほど訪れた青岸渡寺の三重塔もそうですが、朱塗りの礼殿と木々の緑、青空のコントラストが実に美しく、思わず見惚れてしまいます。お祀りされているのは熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ、イザナミノミコト)です。何か日本史の授業で聞いたことがある名前です。

 ここでゆっくりと参拝するのが本来の姿ですが、実は帰りのバスまであまり余裕がありません。その後の予定を考えると、ここでバスを乗り過ごす訳にもいきません。御朱印をいただき、ちょっと焦った気持ちで参拝してしまったためか、何と御本殿を拝観するのを失念してしまいました😓。下調べが十分でなく、経路や所要時間を事前にきちんと調べておかなかったこともミスった原因のひとつだと思います。「後悔先に立たず」という諺にあるとおり、後から後悔しても遅いので、これからはしっかりと調べてから現地に赴きたいと思います。

 急ぎ気味で階段を下りバス停に戻ってきましたが、またまた汗が吹き出してきました。バス停に到着すると発車時刻までまだ4分あったため、近くのお店で思わずソフトクリームを買ってしまいました。

 購入したのは、和歌山県北山村特産の果物「じゃばら」のソースをかけた「じゃばらソフト」です。ちょうど数日前に僕が応援している鉄道系ブロガーの方が「じゃばらウォーター」なる飲み物を紹介しており、どんなものか僕も味わってみたいと思っていたところだったため、「じゃばらソフト」を見つけた瞬間、これをいただくことにしました。柑橘系の果物ということで、すだちのようなさっぱりした味わいでした。

 

那智勝浦駅から特急南紀に乗車

 熊野那智大社のバス停から路線バスに乗車し、再び紀伊勝浦駅に戻ってきました。道中にはカーブの厳しい箇所やアップダウンの激しい箇所があるのですが、往路と復路の運転手さんはともにアグレッシブな運転で、驚くほど上下左右に揺れることがあり、瞬間的に座席からお尻が浮いてしまうほどでした。そのおかげ(?)もあってか、遅れることなく、時間どおりに到着することができました。

 実は当初、熊野那智大社での参拝を終えてから帰路の「南紀」に乗車するまでの時間を利用して、駅近くにある観光桟橋を発着する遊覧船に乗船することを計画していました。そこで駅前でバスを下車するとそのまま観光桟橋に向かったのですが、残念ながら強風のため欠航となっていました。

 予定していた遊覧船に乗船できなくなって現地での時間が余ってしまい、さてどうしたものかと辺りを探していると、「にぎわい広場」という施設の前に無料で利用できる足湯があるのを見つけました。今日は熊野那智大社で思った以上に体力を消耗してしまい、脚も疲れ気味だったので、帰りの「南紀」の発車時刻までこの足湯に浸かって待つことにしました。

 平日ということで、他の利用客もほとんどおらず、気兼ねすることなく足湯を楽しみました。風があったので、濡れた足をそのまま日に当てていると、そのまま乾いて気持ちよかったです。

 脚の疲れを癒し、紀伊勝浦駅に戻ってきました。ここから再び「南紀」に乗車し、名古屋まで帰ります。乗車するのは「南紀」8号で車両はもちろんHC85系です。往路と同じく4両グリーン車なしの編成でした。この時期はまだ日没まで時間があるので、紀伊勝浦駅でもHC85系を撮影することができました。

南紀号で使用されているHC85系:紀伊勝浦駅 2023/7/4

 HC85系に乗車するのは今回が2回目で、昨年7月に乗車した際に車内の座席などを撮影していますが、今回の乗り鉄旅でも撮影してみました。オレンジ色から赤色につながるグラデーションのモケット柄が明るい車内を演出しています。(下の写真は往路の車内で撮影したものです。)

 そしてHC85系のデッキには、高山本線紀勢本線の沿線地域の伝統工芸品を鑑賞できるナノミュージアムというスペースが設置されています。展示されている工芸品は車両ごとに異なっているそうで、どのような工芸品が鑑賞できるのかも、HC85系に乗車する際の楽しみのひとつと言えます。

 帰路の車内ではウトウトしてしまいましたが、「南紀」8号は定刻どおりに名古屋駅に到着しました。今日は往路と復路をあわせて7時間30分ほどHC85系に乗車することができ、また、晴天にも恵まれて初めて熊野那智大社や御滝を参拝することができたため、大満足の乗り鉄旅となりました。

 

乗車券類の紹介

 それでは最後に、今回使用した「南紀熊野古道フリーきっぷ(中辺路コース)」という企画乗車券を紹介します。このきっぷは、名古屋を始め愛知、岐阜、三重県内の主要駅からフリーエリア(熊野市ー紀伊勝浦間)までの往復に特急列車の普通車指定席が利用でき、あわせてフリーエリア内での特急列車や普通列車の普通車自由席が乗り放題となるものです。

 名古屋ー紀伊勝浦間の普通運賃は片道4,590円なので往復だと9,180円ですが、これに対して今回利用した「南紀熊野古道フリーきっぷ(中辺路コース)」は9,970円なので、正規運賃に790円追加するだけで、往復とも「南紀」の普通車指定席が利用できることになります。さらに現地では熊野御坊南海バスもフリー区間で乗り放題となることから、名古屋方面から那智大社や速玉大社、本宮大社を訪れる方にはオススメできるきっぷです。ちなみに乗車日当日でも購入できますので、使い勝手もいいと思います。

 今回の乗り鉄旅の紹介は以上ですが、実は7月中にもうひとつの乗り鉄旅をすでに予定しています。以前から乗車してみたいと思っていた列車の指定券をついに購入することができたため、今からドキドキワクワクしています😊。これについては、次回以降の記事で紹介したいと思いますので、よかったら引き続きお付き合いください。