レン鉄★気ままな乗車記

乗り鉄&きっぷ鉄の管理人が、備忘録を兼ねてブログに綴っていきます。

乗り鉄&きっぷ鉄っぽい管理人が、乗り鉄旅行とそこで使用したきっぷを思うがままに記録したブログです。
どうぞ、お付き合いください。
 

HC85系「ひだ」に乗車する下呂往復乗り鉄旅

 JR東海では、「ひだ」「南紀」用の特急用気動車として長らくキハ85系が使われています。キハ85系気動車は1989年2月に「ひだ」として営業運転を開始し、その約3年後には「南紀」でも使用されるようになり、JR東海の特急形気動車としての役割を一手に担ってきました。思い起こすと僕は中学生の頃、家族旅行で初めて高山に行くことになった際、まだデビューして間もないキハ85系気動車に乗車したことを覚えています。キハ85系が登場する以前、僕の中にあった気動車に対するイメージは、国鉄時代から使われている古びたゴツイ車両といった感じで、電車タイプの車両と比較するとどうしても見劣りがする印象でした。しかし、キハ85系はステンレスの車体に白い前面、オレンジ色の帯が引かれたスマートなデザインで、従来の気動車にはないスピード感もあり、また、今まで以上に車窓を楽しめるよう客室の側窓が大型化されるなど設備面も大幅に向上し、特急形気動車にも新たな時代が到来したことを強く印象付けられました。

 その後も、キハ85系には何度も乗車する機会があり、乗り鉄旅として「ひだ」のグリーン車に乗車して高山を往復したり、「南紀」と「くろしお」とを乗り継いで紀勢本線を完乗したこともあります。

len-railway.hatenablog.jp

len-railway.hatenablog.jp

 実際にキハ85系に乗車していつも感じるのは、他の特急形車両よりも良質な車内空間です。普通席のシートピッチは1,000mmで標準的な特急形車両よりも広く、さらに座席はセミハイデッキ構造となっています。また、グリーン車のうち非貫通先頭車タイプのいわゆるパノラマ仕様のグリーン席では、2+1配置の横3列でシートピッチも1,250mmと非常にゆったりしており、在来線の特急形車両としてはキング・オブ・グリーン席といってもいい程の快適さを提供してくれます。

 そんなキハ85系ですが、登場からすでに30年以上が経過しています。実際に乗車してみると、その後に登場した車両と比較して車齢を感じさせる面もありますが、JR東海らしくメンテナンスが行き届いており、素人目にはまだまだ第一線で活躍できそうな気もします。そんな中、JR東海は2017年、キハ85系の置き換え用として新たな特急形車両を導入予定であることを発表し、2019年には試験走行車となる4両編成の新型車両が登場しました。これがJR東海初のハイブリッド車両となるHC85系です。系列名には“Hybrid Car”を表す“HC”と現行車両から引き継いだ“85”を組み合わせたものが与えられています。

 このHC85系は、試験走行車の落成後、JR東海管内の各地で試験走行を重ねてきましたが、ついに今年7月1日、名古屋-高山間を結ぶ「ひだ」のうち2往復で営業運転を開始することになりました。現行のキハ85系は、名古屋-高山(飛騨古川)間のほかに、1日1往復のみ大阪発着として大阪-高山間を、そして1日4往復は富山発着として名古屋-富山間でも走行しており、これらの区間の一部ではJR西日本の線区に乗り入れることになりますが、運行開始に当たっては、JR東海区間で完結する名古屋-高山間での「ひだ」としてスタートすることになりました。JR東海が数十年ぶりに運行を開始する新型の特急形車両ということで、僕も新型車両の落成当初から注目していましたが、待ちに待った営業運転が開始されたことから、早速、このHC85系「ひだ」に乗車して下呂までの往復乗り鉄旅を楽しんできましたので、これを紹介したいと思います。

新型ひだ号として活躍しているHC85系:名古屋駅下呂駅 2022/7/7

 今回の往復乗り鉄旅を計画するに当たり、まずはHC85系で運用される「ひだ」号を確認してみました。7月の運用開始当初にHC85系で運転される列車は、下り方面(名古屋→高山)は1号と17号、上り方面(高山→名古屋)は4号と10号ということで、ともにHC85系に乗車して名古屋-下呂間を往復するためには、名古屋7:43発のひだ1号(下呂9:25着)と、下呂13:20発のひだ10号(名古屋15:05着)に乗車する行程になります。申込み時点で7日時点の空席状況を見ると、1号と10号のどちらの列車にも余裕があったため、この行程で往復旅を楽しむことにしました。

 上の写真は、名古屋駅下呂駅で撮影したHC85系の外観です。車体はキハ85系と同様にステンレス製で、先頭車両の前面下部から側面上部にかけて白色が配され、無塗装部との境界付近にオレンジ色のラインが引かれています。同じステンレス鋼でも、キハ85系にあった波模様がなくなりストレートの平板となったことで、デザイン的にもすっきりした印象です。また、先頭車両のライトも特徴的で、ヘッド・テールライトにあわせて前面上部の“おでこ”部分にある照明も点灯するようになっています。

 なお、キハ85系気動車の特性として、1両単位で増解結することが可能でしたが、HC85系は編成単位で固定されており、基本編成(4両)と付属編成(2両)を組み合わせて運用されることになります。今回乗車したひだ1号・10号は、ともに基本編成のみの4両でした。6月まで使用されていたキハ85系での運用においても、ひだ1号・10号は基本的に4両編成(普通車自由席1両、グリーン席と普通車指定席の合造車1両、普通車指定席2両)となっていたため、グリーン席が0.5両分増えて普通車指定席が0.5両分減るものの、両数に変更はありません。

普通車の車内

グリーン車の車内

 続いて車内の紹介です。今回は往復ともHC85系に乗車するため、往路では普通車を、復路ではグリーン車を利用しました。普通車の座席は、赤から橙系のグラデーションが施されたモケット柄となっており、明るく高揚感があります。着席してみると、ちょうどN700Sの普通車に似た感覚で、肘掛け部分にモバイルコンセントが内蔵されている点もN700Sと共通です。キハ85系のようなセミハイデッキ構造は採用されていませんが、これは昨今のバリアフリー対応によるものだろうと思います。

 一方のグリーン車の座席は、落ち着きのある緑から青そして紫へとつながるグラデーションのモケット柄となっています。2+2列配置となっており、一見すると、モケット色を除いて普通席との違いがあまり感じられないかもしれませんが、座り心地はグリーン車らしい適度なクッション性で、ヘッドレストキハ85系にはなかった可動式ピローが採用されています。また、背面テーブルも前後に可動するタイプのもので、足元にはフットレストも備えられており、普通車との差別化が図られていることが分かります。欲をいえば、HC85系でもキハ85系に続いて1+2列配置を踏襲して欲しかったところですが、このあたりは定員確保のためやむを得ないのかもしれません。

 HC85系は、JR東海初となるハイブリット車両ということで、その乗り心地も気になっていましたが、実際に乗車してみると、気動車特有の唸るようなエンジン音も聞かれますが、ほとんど気になることがありませんでした。また、走行も非常に滑らかで加速性能もよく、電車に乗車しているのとほぼ同じ感覚です。また、車内チャイムは従来のワイドビューチャイムではなく、アルプスの牧場に変更されていました。

 ここまで車両の紹介が続きましたが、せっかく下呂に来たからにはやはり温泉ということで、今回の旅では日帰り温泉と食事、ちょっとしたスイーツも楽しんできましたので、こちらも紹介したいと思います。下呂駅周辺には、徒歩圏内に多くの旅館・ホテルや温泉施設があり、宿泊だけでなく日帰りで入浴や食事を楽しむことができるプランも用意されています。今回僕は、下呂駅近くにある水明館というホテルの日帰りプランを事前に予約しておきました。

 プランの内容は、飛騨牛ひつまぶし膳の昼食とホテル内の温泉利用がセットになったものです。通常はおとな1人4,700円ですが、「下呂で遊ぼうクーポン」という配布枚数限定のクーポンを利用することで、2,000円引きの2,700円で利用することができました。身体が芯まで冷えるような真冬の寒い日に温泉に入るのもいいですが、夏の暑い日に温泉に入って汗を洗い流すのも気持ちがいいものです。ちなみに水明館では、日帰り入浴用に野天風呂と展望大浴場が用意されており、僕は野天風呂を利用しました。平日ということで入浴客はほとんどおらず、広いお風呂をほぼ貸切状態で利用することができました。昼食の飛騨牛ひつまぶし膳も美味で、これが2,700円で楽しめるのは非常にオトク感があります。

🔵GEROGERO ミルクスタンド 飛騨りんごと馬瀬のとちみつのスムージーミルク

🔵水明館ロビーラウンジ「エビアン」 下呂シューパルフェ

🔵Rigolo×Rigolo 下呂茶ップリン

 下呂では、湯めぐりとともに楽しめる地元の素材を使った様々なスイーツがあるようで、11種類の素肌美人スイーツが市内の各店舗で提供されています。今回の乗り鉄旅は、JTBが発売している旅行商品を利用していますが、JR東海ツアーズの商品と同様に“ずらし旅”のクーポンがセットされており、これを利用することで11種類のスイーツの中から2種類を選ぶことができます。さらにJTB独自の電子クーポンも利用することで3種類のスイーツの中から1種類を選ぶことができるため、あわせて3つのスイーツを楽しむことができました。この3つの中では、写真一番上のスムージーミルクが特に美味しくてお気に入りです。

 先に紹介したとおり、今回は初めてJTBの旅行商品を利用しました。僕はこれまでの乗り鉄旅で、JR東海ツアーズの商品を多く利用しており、今回もいつものようにJR東海ツアーズが発売する商品を購入しようと思っていましたが、何気なくJTBのWebページを検索していると、名古屋-下呂間で「ひだ」号に乗車する旅行商品を見つけました。そこでJTBJR東海ツアーズの旅行商品を僕なりに比較してみると、次のとおりでした。

  ずらし旅 限定列車で行く 日帰り 下呂 ずらし旅 日帰り1day 下呂
旅行会社 JTB JR東海ツアーズ
旅行代金 5,800円 6,500円
グリーン席利用の追加代金(片道当たり) 1,000円 1,200円
座席の希望方法 シートマップ機能あり シートマップ機能なし(連絡事項として号車や座席位置などの希望をリクエストすることは可能)
乗車票の受取方法 駅の指定席券売機でのみ受取 旅行会社の窓口又は郵送で受取(乗車日が迫っている場合は郵送不可)

 どちらの旅行会社も内容は同じで、ずらし旅の電子クーポンも共通ですが、代金は明らかにJTBの方が安くてオトクです。また、JTBの場合、シートマップを利用することができるため、申込み時点での周囲の空席乗車を確認しながら希望の座席を選ぶことができます。JR東海ツアーズの旅行商品をWebで申し込む際にはシートマップは利用できず、また、えきねっとを利用した場合にもJR東海管内の在来線についてはシートマップから座席を選択することができないことから、JTBで申し込む際にシートマップが利用できるというのは意外でした。最後に乗車票の受取方法ですが、これはどちらがいいのか一概には言えませんが、普段利用する駅に指定席券売機が設置されているのであれば、JTBの受取方法も便利で時間や手間も少ないと思います。

 今回は、総じてJTBのほうが安くて利便性にも優れていたため、こちらを利用することにしたものです。これからの乗り鉄旅でも、JR東海ツアーズの旅行商品だけでなく、他社の旅行商品もしっかりチェックしておきたいと思います。

 HC85系は、今後はますます活躍の場を広げて、「南紀」号だけでなく、大阪や富山まで乗り入れる「ひだ」号でも順次、導入されていくと聞いています。長年親しんだキハ85系の運用が消滅してしまうのは残念ですが、今後機会があれば、HC85系による「南紀」号や他区間での「ひだ」号の乗り鉄旅も味わってみたいと思っています。