レン鉄★気ままな乗車記

乗り鉄&きっぷ鉄の管理人が、備忘録を兼ねてブログに綴っていきます。

乗り鉄&きっぷ鉄っぽい管理人が、乗り鉄旅行とそこで使用したきっぷを思うがままに記録したブログです。
どうぞ、お付き合いください。
 

急行「飯田線秘境駅号」に乗車

 飯田線には、「秘境駅」と呼ばれる駅がいくつか存在します。「秘境駅」という言葉に明確な定義がある訳ではないようですが、一般的には、鉄道路線でしか辿り着けない場所や、周囲に人家のない人里離れた場所にある駅を指すということで問題ないと思います。日本各地にはさまざまな秘境駅があり、JR北海道室蘭本線にある小幌駅や、JR四国土讃線にある坪尻駅などは、テレビ番組や鉄道系youtuberなどによる紹介動画などでもたびたび取り上げられたことから、その駅名を耳にしたことがある人も多いと思います。ちなみに僕は、小幌駅には行ったことはありませんが、坪尻駅は「四国まんなか千年ものがたり」に乗車した際に、停車時間を利用してホームに降り立ったことがあります。駅周辺には、人家どころか構造物がほとんど見当たらず、駅自体が周囲の自然に溶け込んで一体化しているような、不思議な感覚を味わったことを覚えています。こうした秘境駅を独自の基準で順位付けし、ランキング形式で紹介しているWebページがあり、「秘境駅へ行こう!!」の著者である牛山隆信氏による最新のランキング(2021年度版)によると、坪尻駅は第4位となっています。

 このランキングをさらに詳しく見ていくと、飯田線の駅がいくつか登場します。第3位は小和田駅、第5位は田本駅、第6位は金野駅、そして第10位は中井侍駅と、上位10駅のうち飯田線の駅が4駅も占めています。さらに、第13位に為栗駅、第20位に千代駅がランクインし、飯田線の「秘境駅」度は全国でもトップクラスであることが分かります。

 こうした秘境駅を訪れる鉄道ファンはいると思いますが、秘境駅というだけあって、運行されている列車は非常に少なく、しかも普通列車しか停車しないために、乗降可能な本数が一日数本だけという駅がほとんどです。そのため、限られた時間の中で、定期運行されている列車を使って秘境駅を訪れるというのは難しく、その困難さが、さらに秘境度合いを高めていると言えます。真の秘境駅ファンであれば、こうした難関を乗り越えてこそ、達成の喜びがあると言えるのでしょうが、もっと気軽に秘境駅巡りを楽しみたいというユーザーも少なくないはずです。また、「秘境駅マニア」とまではいかないまでも、観光気分で効率的に秘境駅巡りができる列車が運行されていれば、一度くらいは参加してみたいという方もいると思います。

 そんな思いを受けて、飯田線にある秘境駅を巡るための列車として運行を開始したのが、「飯田線秘境駅号」です。2010年のゴールデンウィークに運行されたツアー参加者用の団体臨時列車が好評だったことを受け、以降は、ツアー参加者以外でも、乗車券類を駅の窓口で購入することで乗車可能な列車として運転されるようになりました。今では毎年、春と秋の行楽シーズンに数日間、週末を中心に臨時列車として運転されています。昨年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、春季の運行がすべて中止となってしまいましたが、秋季には、運行開始から10周年を記念した「10周年飯田線秘境駅号」として運転されました。

 秘境駅を巡るという、ちょっと変わったコンセプトで運行される列車ですが、様々なメディアで取り上げられることも多く、鉄道ファン以外の方からも人気を博しています。また、車窓から天竜川沿いの風光明媚な景観を堪能できるとあって、沿線の景色を楽しみたいという観光客の利用もあるようです。こうした人気に後押しされながら、JR東海ツアーズを始めとする旅行会社は、「飯田線秘境駅号」への乗車を組み込んだ旅行商品を発売しており、秘境駅号の多くの座席は、旅行会社向けのツアー用に割り当てられているのが現状です。そのため、駅の窓口で一般に発売される座席数は少数で、個人で指定席券を確保するのは相当困難だと聞きます。twitterなどを見ると、過去には「10時打ち」しても確保できなかったという声も聞かれました。

 そんな「飯田線秘境駅号」ですが、僕はこれまで一度も乗車したことがありません。実は昨年の秋季に「10周年飯田線秘境駅号」に乗車しようと思っていたのですが、指定席券の手配が発売開始日より数日遅れてしまい、結局、キャンセル拾いも含めて指定席券を確保することができませんでした。そして2021年春季になり、例年どおり「飯田線秘境駅号」が運転されることが発表されました。運転日は、4月10・11日(土・日)と16・17・18日(金・土・日)の5日間です。今回も発売開始日直後の機会を逃してしまい、指定席券は入手できないかなと諦めかけましたが、3月下旬のとある日、もしかしたら団体枠の開放があったかもしれないと思って窓口で確認したところ、運よく11日(日)の飯田→豊橋間に空席があったため、速攻で指定席券を購入しました。窓口の方によれば、数日前までは空席がなかったとのことで、やはり団体枠の開放があったようです。何はともあれ、貴重な指定席券が確保できたことから、今回は飯田線秘境駅を存分に味わう乗り鉄旅を楽しむことにしました。

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飯田線秘境駅号に続いて飯田に向け発車する伊那路号:豊橋駅 2021/4/11

 まずは、始発の飯田駅まで行くため、豊橋から下りの飯田線に乗車します。時刻表で調べて見ると、秘境駅号の発車時刻に間に合うように、豊橋から普通列車を乗り継いで飯田まで行くこともできるようなので、当初は、のんびりと普通列車で行こうかと考えていましたが、直前に考え直して、特急「伊那路」を利用することにしました。「伊那路」に乗車するのは久しぶりで、以前に乗車したときは新城→豊橋間だったため、新城以北の区間では初めてになります。

len-railway.hatenablog.jp

  「伊那路」は普段、373系3両で運転されており、そのうち1号車のみが指定席で、2・3号車は自由席となっていますが、例外的に2・3号車のコンパートメント席だけは、指定席となっています。さらに秘境駅号の運行日など、多くの利用が見込まれる日には、2号車の通常座席も指定席に変更されます。数日前に駅の指定席券売機で4月11日の伊那路1号の指定席の発売状況を確認したところ、1号車、2号車ともかなり余裕のある状態でした。当日になって、発車30分くらい前に豊橋駅の窓口で再度聞いてみると、普通座席とコンパートメント席のどちらにも空席があったため、今回はコンパートメント席を利用することにしました。コンパートメント席は、4人掛けのボックスタイプの座席ですが、座席単位で指定席券を発売するため、場合によっては、他の乗客と相席になる可能性があります。しかし、コンパートメント単位で空きがあるとのことだったため、おそらく相席になることはないだろうと判断し、ゆったりできるコンパートメント席を選んだという訳です。

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 僕は、373系のコンパートメント席が結構お気に入りで、静岡地区のホームライナーを利用する際、空きがあれば、コンパートメント席を利用することが多いです。大型のテーブルが備え付けられているため食事をしたりするのにも便利で、また、車端部に位置するため人の行き来が少ない点も、コンパートメント席の利点だと思います。

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 ちなみに豊橋駅では、「飯田線秘境駅オリジナル弁当」を販売しています。秘境駅号の運行日限定というわけではないようですが、せっかくの機会なので「伊那路」の車内で食べようと購入しました。この弁当のどういったところが秘境駅オリジナルなのかは、よく分かりませんでしたが、内容は松花堂風の幕の内弁当といった感じで、いろいろなおかずが盛り込まれており、どれも美味しかったです。価格は税込み1,130円です。

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 写真は「飯田線秘境駅号」です。上の2枚は豊橋駅で、下の2枚は飯田駅で撮影したものです。僕が乗車する秘境駅号は、飯田発の上り列車ですが、同じ秘境駅号の下り列車が豊橋駅を9時50分に発車するため、その発車直前の様子も撮影しました。秘境駅号で使用されている車両は、特急「伊那路」と同じ373系です。

 JR東海では、こうしたイベント列車に373系を使用することが多く、中央線の「中山道トレイン」や身延線の「ゆるキャン△梨っ子号」も373系で運行されました。僕はこれまで、373系には何度も乗車しており、今回も伊那路1号に乗車するため、車両自体に目新しさはありませんが、イベントにあわせた専用のヘッドマークが掲出されていると、何となく特別感のようなものがあります。

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 ちなみに今回乗車する上りの秘境駅号の停車駅は、天竜峡千代金野田本為栗平岡伊那小沢中井侍小和田浦川そして終点の豊橋で、このうち赤字の7駅が秘境駅ということです。種別は急行ですが、秘境駅を巡ることをメインとするイベント列車のため、特急停車駅である豊川や本長篠などは上下列車とも停車駅となっていません。また、秘境駅の各駅では、5分から15分程度の停車時間が設定されており、平岡駅では地元の特産物の販売なども行われていました。

 

千代駅

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金野駅

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田本駅

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為栗駅

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伊那小沢駅

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中井侍駅

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小和田駅

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 せっかくの秘境駅を巡る列車ということで、それぞれの停車駅では、駅周辺の様子を見学したり、写真を撮影したりしました。その中でも一番印象的だったのが小和田駅です。まさに日本を代表する秘境駅と言える駅ですが、単純に殺風景といった感じではなく、古びた木造駅舎と山深い周辺の景色が広がっており、まるで数十年もの間、時間が止まっているかのような光景でした。また、田本駅は、両側をトンネルに挟まれており、さらにホームの背後には大きなコンクリート壁が立ちはだかるという狭小空間に位置する駅でした。為栗駅では、ホーム上から新緑の天竜川の風景を眺めることができ、どの駅でも秘境駅号ならではの貴重な経験ができました。

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 飯田駅発車後、すぐに乗車証明書の配布が始まりました。こうした証明書や記念乗車証は、ポストカードサイズの1枚ものがほとんどですが、今回いただいた乗車証明書は二つ折りになっており、開いてみると、中井侍駅駅名標と周囲の風景が立体的に飛び出す仕組みとなっていました。

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 乗車券は、豊橋-飯田間を含むJR東海の西側区間が1日乗り降り自由となる「青空フリーパス」を利用しました。青春18きっぷと異なり、別に特急券急行券を購入することで、特急・急行列車にも乗車可能なため、今回のような乗り鉄旅にはぴったりです。フリーパス区間に比べて、実際に乗車する区間が限定的になってしまいますが、豊橋-飯田間の普通運賃は片道で2,640円であるため、今回の旅行行程でも十分に元が取れます。
 あわせて往路の伊那路号の特急券と、復路の秘境駅号の急行券も紹介します。伊那路号は、コンパートメント席を利用したため、列車名の後ろに(コ)と記載されています。

 そして気になる乗車率ですが、「飯田線秘境駅号」と言えば、先にお話ししたとおり、指定券の発売直後に満席となってしまうこともある中、今回乗車した上り列車は、おおよそ50%程度といったところでした。僕は窓側のA席でしたが、隣のB席は終点まで空席のままでした。周りの様子を見ても、相席となっている人はいなかったように思います。どうやら、旅行会社によるツアー客がいなかったようで、その影響が大きかったようです。おかげで、あまり気兼ねし過ぎることなく、ゆったりとした秘境駅の旅を楽しむことができました。