レン鉄★気ままな乗車記

乗り鉄&きっぷ鉄の管理人が、備忘録を兼ねてブログに綴っていきます。

乗り鉄&きっぷ鉄っぽい管理人が、乗り鉄旅行とそこで使用したきっぷを思うがままに記録したブログです。
どうぞ、お付き合いください。
 

観光列車「TOHOKU EMOTION」に乗車

 いよいよ12月後半となり、今年も残りわずかとなりました。社会人になってからは、1年という年月が瞬く間に過ぎ去ってしまうように感じられますが、特に今年は6月下旬に父親が体調を崩して以来、家庭内での生活様式が大きく変化し、これまでに経験のない不慣れな出来事の連続で、あれこれと右往左往しているうちに年末になってしまったというのが実情です。これまでは、家族が揃って年末年始を迎えることに特段の意味を感じていませんでしたが、これは決して当たり前のことではなく、幸せで感謝すべきことだということを実感したところです。

 また、今年1年間の社会動向を振り返ると、昨年に引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大と、これに伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に振り回され続けた年だったと感じています。首都圏を中心に日本各地で繰り返された緊急事態宣言が9月末の期限をもってようやく解除され、10月1日からは全国で緊急事態宣言もまん延防止等重点措置の適用もない生活が始まりました。ワクチン接種が進められたこともあってか、以降は国内での感染状況も落ち着いており、行楽シーズンとも重なって、最近は徐々に観光地も賑わいを取り戻しつつあるようですが、一方で新たな変異株が見つかり、国内でも感染者が確認されるなど、まだまだ予断を許さない状況が続いています。世間では必ず「第6波」がやって来ると言われており、現在の落ち着いた状況がいつまで続くのか分かりませんが、僕としてはこれまでどおり、感染リスクの高い行動を避けるとともに、基本的な感染防止対策にしっかりと取り組んでいきたいと思っているところです。

 さて、そんな昨今の状況の下、おそらく今年最後となる乗り鉄旅として、八戸線の八戸-久慈間で運行されている観光列車「TOHOKU EMOTION(東北エモーション)」に乗車することになりました。今年は、食も楽しめる観光列車(レストラン列車)ということで、10月にはトキ鉄の「雪月花」に、9月にはJR九州の「或る列車」に乗車することができましたが、今回はこれらに続く第3弾となります。

 「TOHOKU EMOTION」は、いつかは乗ってみたいと憧れていた観光列車の一つですが、なかなか乗車する機会に恵まれませんでした。「TOHOKU EMOTION」は団体専用として運行される列車で、みどりの窓口での取扱いはありません。そのため、乗車するためには旅行商品の購入が必須となるわけですが、僕にとっては、この旅行商品の購入にも高いハードルがあります。というのも、「TOHOKU EMOTION」に乗車するためには、JR東日本系列のびゅうトラベルサービスが販売するびゅう商品を購入するのが一般的ですが、これは大人1名を含む2名以上で申し込む必要があり、1名での利用はできません。そのため、大人1名で利用したい場合には、びゅうトラベルサービス以外の旅行会社が販売する旅行商品の中から、1名でも利用可能なプランを探して申し込む必要があるのですが、そもそも「TOHOKU EMOTION」は、びゅう商品としての運転日の設定がほとんどで、びゅう以外の旅行会社が販売する旅行商品で運転する日はごくわずかです。これまでにも、機会を捉えてはいろいろな旅行会社のWebページを検索してみましたが、なかなか僕の希望に近い旅行商品を見つけることができませんでした。そんな中、11月のある日にたまたまクラブツーリズムのWebページを見ていると、12月20日(月)に同社による「TOHOKU EMOTION」のツアーが設定されており、1名からでも申し込み可能となっていました。その内容を見ると、往復とも「TOHOKU EMOTION」に乗車する日帰り旅で、僕が思い描いていたものとピッタリ一致したため、その場ですぐに申込手続きをしたところです。

 なお、今回のクラブツーリズムの旅行商品の中には、「TOHOKU EMOTION」の出発駅となる八戸駅に集合・解散となる現地発着プランのほか、首都圏からの日帰り旅行に便利な東京発着プランというものもあり、こちらのプランには、東京-八戸間の東北新幹線はやぶさ」号の普通車指定席の往復分がセットになっています。どちらのプランにするか少し考えましたが、トータルの代金を計算してみると、どうやら後者の東京発着プランの方がオトクに利用できそうだったので、こちらのプランを利用することにしました。

 これで東京-八戸間の移動手段は確保できましたが、豊橋-東京間については、別途、何らかの移動手段を確保する必要があります。僕の場合、旅行商品で指定された東京7:32発の「はやぶさ」号に乗車するためには、当日朝に最寄り駅から始発の列車に乗車しても間に合わないことから、前日から東京への移動を開始する必要があります。当初は、前日夜の新幹線で東京に行き、東京で1泊することを考えましたが、夜行バスでも十分かなと考え直し、結局、往路では、当日の午前6時少し前に新宿に到着する夜行バスを利用することにしました。そして復路の東京→豊橋では、オーソドックスに新幹線を利用することとし、旅行行程全体のうち鉄道利用部分は、次のとおりとなりました。

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 すでに紹介したとおり、東京-八戸-久慈間の往復は、すべてクラブツーリズムの旅行商品を利用して乗車します。このツアーでは、東京-八戸間で利用する「はやぶさ」もあらかじめ号数が指定されており、往路は「はやぶさ5号」、復路は「はやぶさ38号」に乗車します。今回の乗り鉄旅のメインとなる「TOHOKU EMOTION」には、八戸線の八戸-久慈間で往復とも乗車しますが、運行ダイヤはびゅう商品による場合と同じものになっていました。ちなみに今回の八戸-久慈間の乗車は、僕にとって初の八戸線乗車となります。

 なお、往路の「TOHOKU EMOTION」が久慈に到着してから、復路の発車時間までの間、現地での自由時間となりますが、時間も限られており、駅前や近隣施設を見学する程度です。僕としては、往復とも「TOHOKU EMOTION」に乗車することが最優先のため、現地での滞在時間は特に気になりません。
 八戸から東京まで「はやぶさ38号」で移動した後は、東京20:27発の「こだま757号」で豊橋に戻ります。思い返してみると、最近はJR東海ツアーズの「日帰り1dayシリーズ」を利用して東海道新幹線に乗車する機会が多く、特に東京-豊橋間では「ひかり」号をよく利用していたため、東京から「こだま」号に乗車するのは久しぶりのような気がします。

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 「TOHOKU EMOTION」の運行ダイヤは上のとおりです。往路は八戸を出発後、終点の久慈までの間に途中停車駅は設定されていませんが、復路では、種差海岸、鮫、本八戸の各駅に停車するダイヤが組まれています。団体専用列車であるため、基本的に途中駅での乗降はないはずで、いわゆる観光停車なのかとも思いましたが、途中駅では到着後すぐに発車することから、ホーム上で写真撮影するような余裕はなく、観光目的での停車ではないようです。運転停車であればわざわざ時刻を公表する必要もないと思うので、何のために停車駅として設定されているのか、結局よく理由が分かりません。

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TOHOKU EMOTIONで使用されているキハ110系:八戸駅久慈駅 2021/12/20

 東京-八戸間の往復で乗車したE5系新幹線は、これまでにも何度か紹介していますので、今回は省略し、早速、「TOHOKU EMOTION」を紹介したいと思います。
まずは車両についてですが、ご覧のとおり、JR東日本の非電化区間ではお馴染みのキハ110系気動車を改造したものです。外観は種車の姿がそのまま残っていますが、車両全体に白色のレンガ積みされたようなデザインが施されており、お洒落な西洋風のレストランカフェを連想させるものとなっています。また、どこか童話の世界から飛び出してきたような、ちょっとメルヘンチックな印象もあり、愛くるしさも伝わってきます。

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 車両は全3両編成ですが、団体専用列車としてのみ使用されるということで、乗降口は2号車のみとなっています。発車前には扉の上部に幌やランプが取り付けられ(もちろん走行中は取り外されています)、他の車両では見かけないような凝った演出も行われており、これから始まる旅の気分を盛り上げてくれます。

 それでは次に車内の紹介です。「TOHOKU EMOTION」の車内は、ライブキッチンを中心としたレストラン空間となっており、全3両編成のうち1号車はコンパートメント個室車両、2号車はライブキッチンスペース車両、3号車はオープンダイニング車両となっています。このうち2号車はすべてが調理用のキッチンスペースとなっており、座席定員が設定されていないため、乗客は1号車か3号車のどちらか指定された号車の座席に乗車することになります。

■1号車

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 4人1部屋のコンパートメント7室が配置されており、座席定員は28名です。室内は対面のクロスシートで中央に大型のテーブルが備え付けられています。レイアウト的には、HB-E300系の「リゾートしらかみ」や「海里」のコンパートメント席と同じような空間となっていますが、廊下と各個室との間に簡易な扉が設けられており、プライベート感が高められています。また、7室すべてが海側に配置されており、車窓からの眺めにも配慮されています。

 なお、今回は同じクラブツーリズムによる別の団体客が1号車を利用していましたが、7号室は添乗員さん用に割り当てられており、自由に写真撮影させてもらうことができたため、コンパートメント内も撮影しました。

■2号車

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 1両まるごとキッチンスペース車両となっており、オープンキッチン、バックキッチン、オープンバーで構成されています。車内で調理する場所といえば、寝台特急の食堂車のような狭小空間を思い浮かべてしまいますが、「TOHOKU EMOTION」はこうした概念を覆すような、開放感あるキッチンスペースが確保されています。オープンキッチンでの調理の様子やオープンバーでの盛り付けの風景をそのまま見学することができ、街中のレストランでは見ることができない、ライブ感覚の演出を楽しむことができます。
 ちなみに2号車の形式記号は「キクシ112-701」で、これは国鉄時代を通じても初となるものだそうです(ちなみに、過去にJR北海道に在籍していたトマムサホロエクスプレスにも食堂車が組み込まれましたが、こちらは「キシ80-501」でした)。

■3号車

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 車両中央の通路を挟んだ両側にテーブルが並べられており、海側に4人用テーブル席×3組、山側に2人用テーブル席×4組となっています。僕が申し込んだツアーはすべてひとり参加の計10人で、座席は全員が3号車に割り当てられました。ちょうど定員の半数で利用することになり、適度に間隔が保たれて周囲の方の視線が気になることもありませんでした。テーブル配置や座席のタイプは全く異なりますが、以前乗車した「フルーティアふくしま」の2号車の雰囲気に似ていると感じました。「フルーティアふくしま」には、1人掛けのカウンター席がありましたが、「TOHOKU EMOTION」には1人掛けの座席はありません。4人掛けのテーブル席は、側窓に向かってコの字型に座席が配置されており、また、2人掛けのテーブル席は、一般的な対面ではなく、三角形のテーブルを挟み込むような直角の並びで座席が配置されていました。どの座席の乗客にも車窓を楽しんでもらえるよう、テーブルの配席が工夫されています。

 なお、今回のツアーでは、往路と復路でそれぞれ別の席が指定され、僕の場合、往路は4人用席の進行方向側、復路は2人用席の進行方向側になり、往復で海側と山側双方の車窓を楽しむことができました。どちらの座席も快適で、備え付けのテーブルにも不便さを感じることはありませんが、車窓を楽しむには、圧倒的に海側の4人用席の方が有利です。ひとり参加で「TOHOKU EMOTION」の海側座席を利用できる機会はほとんどないと思いますので、これはラッキーだったと思います。

 「TOHOKU EMOTION」の車内の内装には、随所に東北地方の伝統工芸を活かしたインテリアが施されています。例えば1号車のコンパートメント個室席の壁面ファブリックは福島の「刺子織」を、3号車の床は青森の「こぎん刺し」、照明は岩手の「琥珀」をモチーフにしているとのことです。以前に「あめつち」に乗車した際にも感じたことですが、普段の旅行の中で沿線各地の様々な伝統工芸や伝統的産業に触れる機会はあまりないため、車内にいながら地域の歴史や文化を感じることができるというのは、とても貴重な体験だと感じます。

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 先ほどお話ししたとおり、往路では海側の座席を利用することができ、沿線各地の風景を楽しみながら乗車することができました。海岸線沿いを走る列車に乗車したからには、やはり海を見たいものです。また、八戸線沿線には、多くのウミネコ飛来することで有名な蕪島や、天然芝が波打ち際まで広がる種差海岸などの景勝地があります。種差海岸の方は、時期的に青々とした天然芝に覆われた美しい姿を見ることはできませんでしたが、蕪島神社は車内からでもはっきりとその姿を見ることができました。

 続いて「TOHOKU EMOTION」の最大の魅力である食についてですが、往路区間の八戸→久慈は昼食付きのランチコース、復路区間の久慈→八戸はデザートとアフタヌーンティーを楽しむコースとなっています。なお、ランチコースのメニュー内容は年4回替わるということで、今回は2021年10月~12月の期間に設定されたコース料理が提供されました。料理で使われる食器類や食材にも地元のものが用いられているということで、東北の食を十分に楽しむことができるようになっています。今回は、往路のランチコースと、復路で提供されたオードブルとデザートの数々を写真に収めましたので、ここで紹介したいと思います。

■往路でのランチコース

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■復路でのデザート&アフタヌーンティー

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 観光列車によくある記念乗車証類ですが、今回のツアーに参加した限りでは、特にいただくことはありませんでした。「TOHOKU EMOTION」には記念乗車証がないのか、それともびゅう商品で申し込んだ場合にのみ配布されるものなのか、どちらなのか分かりません。その代わりという訳ではありませんが、車内には沿線の見どころを紹介した「景観のおしながき」というものがありました。さらに乗車記念品ということで、オリジナルバッジをいただきました。

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 クラブツーリズムによる今回のツアーでは、参加者全員の乗車票を添乗員さんが一括して管理しているため、参加者各個人に乗車票類が手渡されることはありませんでした。「きっぷ鉄」でもある僕としてはちょっと残念に思っていましたが、八戸で「TOHOKU EMOTION」を下車し在来線改札口から出場する際、乗車記念に1枚いただけないかとダメ元でお願いしたところ、無効印を押印した乗車票を快くいただくことができました。僕以外の参加者の中にも、記念に持ち帰りたいという方がおり、数人が受け取っていました。こんなことなら、往路で乗車した「TOHOKU EMOTION」の分も貰っておけばよかったと、後からちょっと後悔したところです。

 なお、東京からは新幹線で豊橋に戻りますが、もともと「こだま」を利用する予定だったため自由席で十分だろうと考え、あらかじめ金券ショップで購入しておいた回数券のバラ売りを利用しました。「ぷらっとこだま」を利用したいところですが、残念ながら「ぷらっとこだま」には豊橋発着の設定がありません。豊橋発着にも一定の需要はあると思うのですが、やはり「ぷらっとこだま」の設定は難しいのでしょうかね。

 それから、巷の噂では、年が明けると「GO TO トラベル」が再開される動きもあるようです。すでに1年にわたって休止状態にあり、いつ再開されるのか、利用条件や割引率がどのように変更されるのか、現時点で正式な決定は行われていないようですが、新しい年は、年間を通じて落ち着きを取り戻し、いつでも自由に気兼ねなく乗り鉄旅を楽しむことができるような年になることを願っています。