近年、豪華寝台列車が大きな話題になっています。2013年10月15日に運行を開始したJR九州の「ななつ星in九州」を機に、2017年5月にはJR東日本の「トランスイート四季島」が、そして同年6月にはJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」が運行を開始しました。
これらは周遊型臨時寝台列車(クルーズトレイン)と呼ばれており、車内での食事や途中駅での下車観光を含め、その列車に乗車すること自体を旅の目的にするという点が、これまでの寝台列車とは大きく異なる点です。したがって、みどりの窓口での寝台券の販売は一切なく、すべて旅行商品として販売されていることも特徴の一つです。
また、その車両も上質な旅に相応しい最上級クラスの車内設備を備えており、特に「トワイライトエクスプレス瑞風」のスイート寝台車「ザ・スイート」は、1両に1室のみという広いスペースを占有しており、室内にはエントランスからプライベートバルコニー、リビング・ダイニング、寝室、トイレ、さらにはバスタブ付バスルームを備えるなど、これまでの鉄道車両の概念を超える仕様となっています。
乗り鉄の僕としても、もちろん豪華寝台列車への憧れはあるのですが、その価格も桁違いで、もはや自身が乗車できるものという思いはなく、雲の上の存在といったところです。
そんな中、僕でも乗車できそうな、ちょっと豪華で贅沢な寝台列車として気になってなっていたのがJR東日本のE26系客車を使用した「カシオペア紀行」の旅です。E26系客車は北海道新幹線の開業前の2016年3月までは、上野-札幌間を約17時間かけて隔日運行する「寝台特急カシオペア」として運行されていましたが、現在は上野駅から東日本の各地を結ぶ団体専用列車として週末を中心に運行されています。
たまたま夏の旅行先を探していた際に、びゅうトラベルサービスの旅行商品である「カシオペア紀行 湯沢行き」が目に留まりました。上野から湯沢までの片道乗車で15万円を超える価格設定に戸惑いながらも、インターネットからキャンセル待ちで申し込みをしたところ、何と翌日には受付完了のメールが届いたのです。どうしようかと正直少し悩みましたが、せっかくの機会だと考えて思い切って参加してみることにしました。
「カシオペア紀行 湯沢行き」の行程は、実にシンプルで、
上野駅16:20発 → 湯沢駅16:00着(夕、朝、昼の計3回の弁当付き)
というものです。なんと、カシオペアにほぼ24時間乗車することになる訳です。
これまでに経験のない列車旅とあって、乗車前からドキドキわくわくした日々を送ること数週間、いよいよ乗車当日を迎え、出発駅である上野まで向かうことにしました。上野駅での受付は午後3時からとなっていましたが、絶対に遅れないように、かなり時間に余裕をもって、正午ごろには上野駅に到着するようにしました。
上野駅近くのインターネットカフェで時間調整し、いよいよカシオペアと初対面する時間となりました。係員の方から個室番号が書かれた乗車証を受け取り、上野駅の13番線ホームで待つこと数十分、尾久車両センターから推進運転されてきたE26系客車が目の前に現れました。
E26系客車を初めて見た感想を問われれば、「カッコいい」の一言です。シルバーの車体に青・紫・赤・橙・黄の5本帯を配したデザインは新鮮で、これから始まる旅の気分がグッと盛り上がります。
ちなみに今回利用する客室は、「カシオペアツイン」です。カシオペアの中では最も多いタイプの個室寝台で、位置により2階席、1階席、車端室の3タイプがありますが、今回の旅行商品は1階席のみの設定となっていました。室内には洗面設備やトイレが備わっており、スイートのような広さはないものの、機能的で使い勝手も悪くありません。ツインということで2人用の個室となりますが、ベッドがL字型に配置されているのが印象的でした。
上野駅で乗車するとすぐに、アテンダントさんがウエルカムドリンクのオレンジジュースを提供してくれました。出発時にちょっとしたサービスがあると、これからの旅がより楽しいものになるような予感がするのは、僕だけでしょうか?
さて、先に書いたとおり、今回の旅行では夕、朝、昼とも弁当が用意されています。特に夕食は「カシオペアスペシャル弁当」という三段重で、カシオペアの名に恥じない豪華な内容で、見た目からも美味しさが伝わってきます。
ボリューム満点のお弁当でお腹は十分に満たされたものの、僕にはもう一つの楽しみがあって、それはダイニングカー(食堂車)の利用です。とは言っても、夕食でのダイニングカーの利用は「懐石御膳」か「フランス料理」付きプランの乗客に限られます。その他の乗客がダイニングカーを利用するには、午後9時30分から開始される「パブタイム」を狙うしかありません。事前に調べると、僕と同じようにパブタイムを狙う乗客は少なくないようで、場合によっては開始時間前に座席数を超える人が列を作ることもあるようなので、かなり前に3号車のダイニングカーに向かいましたが、すでに4号車まで行列が延びており、大丈夫かと心配しましたが、無事に着席することができました。
パブタイムのメニューは限定されており、それほど多くありません。本来であれば、カレーを注文して食事を楽しみたいところですが、僕のお腹はすでにスペシャル弁当で満たされていたため、アイスクリームとマンゴージュースを注文しました。普通のアイスクリームやジュースでも、カシオペアのダイニングカーで飲食していると思うと、何だか贅沢な気分になれるのは不思議です。
E26系客車には、12号車に「ラウンジカー」が連結されており、ラウンジ・展望室は共用空間として乗客であれば誰でも自由に出入りすることができます。上野駅出発時は、ラウンジカーの前に電気機関車が連結されていますが、青森駅からは進行方向が変わり、ラウンジカーが最後尾となるため、開放的な後方展望を楽しむことができます。BGMの流れるラウンジカーで、とても優雅な時間を過ごすことができました。
長々と綴ってきましたが、今回の「カシオペア紀行 湯沢行き」は大大大満足の旅でした。他の乗客の中には、いわゆるリピーターの方も多くいたようで「もう一度、乗車してみたい!!」と思う気持ちは僕も同じです。しかし、旅行代金のことを考えると、そうそう頻繁に利用することはできません。団体での不定期運行に係るコストを考えれば、こうした旅行代金もやむを得ないのかなとは思いますが、上野-札幌間を隔日運行していた時代から比べて、乗車に要する費用は相当高くなってしまったことが残念でなりません。隔日運行の時代に札幌まで乗車しておけばよかったな~と、ちょっと後悔させられた旅行でもありました。
[おまけ]
乗車記念のポストカードを2枚いただきました。