レン鉄★気ままな乗車記

乗り鉄&きっぷ鉄の管理人が、備忘録を兼ねてブログに綴っていきます。

乗り鉄&きっぷ鉄っぽい管理人が、乗り鉄旅行とそこで使用したきっぷを思うがままに記録したブログです。
どうぞ、お付き合いください。
 

2つの観光列車とSLに乗車する九州乗り鉄旅(3)~36ぷらす3編~

 前回の記事からの続きです。

 今回の乗り鉄旅では、JR東海ツアーズが発売している1泊2日の旅行商品「ダイナミックぷらっと 九州シングル」を利用しており、宿泊は博多駅の近くにあるホテルユニゾ博多駅博多口です。この旅行商品は、名古屋⇔博多間の「のぞみ」号の普通車指定席の往復と、ホテルへの宿泊がセットになったもので、予約日時によって旅行代金が変動する価格変動型商品です。今回申し込んだ際には31,700円で、これでも正規の運賃・特急料金から考えれば十分に安いものですが、実は6月下旬に出発を予定していた際に同じツアーで手配したときには、さらに安い27,300円(早割による500円引の後の額)でした。時期の違いということもありますが、今回は「ダイナミックぷらっと秋旅セール」が発売される直前に申し込んでしまったことが影響しているようです。

 利用したホテルユニゾ博多駅博多口は、博多駅から少し離れた位置にありますが、1泊2日の利用には何の不自由もなく、また、設備も綺麗な新しいホテルでした。なお、今回は早朝に出発する予定のため、朝食のない素泊まりプランとしました。

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にちりんシーガイア号で使用されている787系博多駅 2021/9/12

 ホテルを早めにチェックアウトし、博多駅に到着しました。あらためて2日目の乗り鉄旅の行程を確認すると、博多から大分まで「にちりんシーガイア」号で移動し、大分からは「36ぷらす3」に乗車して博多に戻ります。まさに「36ぷらす3」に乗車することだけを目的とした大分までの往復旅で、乗り鉄ならではの旅となります。

 上の写真は、出発直前の「にちりんシーガイア」号を撮影したものです。実は列車が入線してくるまで、僕は783系で運用されていると勝手に勘違いしていましたが、よく調べてみると、787系が所定の運用となっているようです。

 この「にちりんシーガイア」号ですが、博多ー宮崎空港間を1日1往復運転しています。博多ー大分間が「ソニック」、大分ー宮崎空港南宮崎)間が「にちりん」というのが基本となっていますが、「にちりんシーガイア」はこれらの区間を直通しており、その運行距離はなんと413.1㎞です。これは、定期運行を行うJRグループの在来線昼行特急列車としては最長距離となっています。僕は途中の大分までの乗車のため、「にちりんシーガイア」でなく「ソニック」でもよかったのですが、たまたま時間的にちょうどよかったということと、一度くらいは最長距離を走行する特急列車を利用してみたかったということで、乗車することとしたものです。

 車両は787系で、この車両には以前の九州乗り鉄旅で「かもめ」として乗車したことがあります。「にちりんシーガイア」号の場合、全6両編成のうち3号車にボックスシートがありますが、普通車の指定席は2号車のみとなっていることから、このボックスシートは自由席ということになります。実際に乗車してみると、車内の座席には相当余裕があり、他の乗客に迷惑をかけることもなさそうだったため、車掌さんの許可を得て、本来の指定座席から3号車のボックスシートに変更することにしました。

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3号車のボックスシート

 ボックスシートといっても、昨日乗車した「SL人吉」の客車にあるようなボックス席ではなく、それぞれが半個室となっているコンパートメントタイプの座席です。大型のテーブルも据え付けられており、車内で朝食を食べるのにも非常に便利です。大分までの乗車時間は約2時間30分で、決して短いものではありませんが、ゆったりとした4人用のボックスシートを1人で利用させてもらえたことで、とても快適に乗車することができました。

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36ぷらす3号で使用されている787系中津駅門司港駅大分駅 2021/9/12

 大分に到着し、トイレ休憩を済ませるなどして再び改札を通ると、ホームにはすでに「36ぷらす3」が入線していました。車両自体は、先ほど乗車したのと同じ787系ですが、カラーリングがとても美しく、特別な列車であることが伝わってきます。「36ぷらす3」は、2020年10月に運行を開始した列車で、JR九州のD&S列車の第12弾として登場しました。これまでのD&S列車はすべて気動車でしたが、今回の「36ぷらす3」は初の電車となります。また、他のD&S列車と同様、水戸岡鋭治氏が車両のデザインを担当しています。

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 車両の外観は、まさに黒です。ちょうど昨日の「SL人吉」を牽引していた58654(8620形)蒸気機関車と同じ真っ黒のカラーリングとなっています。さらに、ところどころに金色の装飾が施され、これまた昨日乗車した「或る列車」を連想させるものがあります。ちなみに「36ぷらす3」というちょっとかわった列車名ですが、九州が世界で36番目に大きい島ということを示すとともに、沿線の35のエピソードと利用者自身による“36番目のエピソード”を表しており、これに3を加えて、36+3=39で「サンキュー(39)の輪」を広げたいという願いが込められているということです。

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 ここで、「36ぷらす3」の運行ルートを紹介したいと思います。「36ぷらす3」は、5日間かけて九州内を反時計回りに一周するというもので、木曜日に博多を出発し、肥薩おれんじ鉄道線を経由して鹿児島中央まで向かいます。金曜日は鹿児島中央から宮崎へ、土曜日は宮崎空港から別府へと進み、今回僕が乗車する日曜日には、大分から博多に戻るというものです。なお、月曜日には、周遊ルートを外れて、博多ー長崎間を往復で運行しています(火曜日と水曜日は運行していません)。

 それぞれのルートには、沿線のエピソードにあわせた色が設定されており、木曜日は"赤の路"、金曜日は"黒の路"、土曜日は"緑の路"、日曜日は"青の路"、月曜日は"金の路"と呼ばれています。このうち運行距離が最長となるのは博多ー鹿児島中央間の"赤の路"で317.1km(JR鹿児島本線200.2km+肥薩おれんじ鉄道116.9km)で、逆に最短となるのは鹿児島中央ー宮崎間の"黒の路"で125.9kmです。乗車時間もそれぞれ異なりますが、僕が今回乗車する"青の路"は、運行距離198.5kmで、乗車時間約5時間45分という、久しぶりの長時間の乗車旅となります。

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 "青の路"の時刻表です。JR時刻表などでは、乗下車可能駅となる大分、別府、小倉、博多の発着時間が公表されていますが、実際には杵築駅中津駅でおもてなし停車があり、さらに門司港駅にも立ち寄って自由散策の時間も用意されています。同じく大分ー博多間を走る特急「ソニック」には、最速で2時間強で結ぶものもありますが、「36ぷらす3」は約2倍の時間をかけて走ります。特急でありながら、ゆったりした、そして、のんびりした乗り鉄旅を楽しむことができます。

 「36ぷらす3」は全6両編成の全車グリーン車指定席ですが、それぞれの号車ごとに車内設備が異なっています。また、旅行商品のみで利用できる号車と、駅の窓口で購入する特急券・グリーン券でも利用できる号車に別れています。これらを簡単にまとめると、次のとおりです。

 1号車 旅行商品専用 グリーン個室(3〜4名用)畳敷き
 2号車 旅行商品専用 グリーン個室(4〜6名用)
 3号車 旅行商品専用 グリーン個室(1〜2名用)ビュッフェあり
 4号車 マルチカー 
 5号車 旅行商品又はきっぷ 1+2配置のグリーン席
 6号車 旅行商品又はきっぷ 1+2配置のグリーン席 畳敷き

 1号車と6号車は畳敷きになっており、靴を脱いで寛ぐことができる車両です。3号車は、セミコンパートメントのグリーン個室とビュッフェの合造車で、もともと787系の落成当初に運用されていたビュッフェが復活しています。5号車と6号車は車内中央部で客室が区切られており、旅行商品購入者用の座席と、通常の特急券・グリーン券購入者向けの座席が分けられています。

 車内では時間に余裕があったので、各号車の様子を撮影してみました。なお、1号車と6号車は畳敷き車両で、わざわざ撮影のために靴を脱いで車内に立ち入ることも憚られたため、撮影していません。

2号車

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 グリーン個室3室と、車いす対応座席が2席あります。なお、個室と言っても、完全に間仕切りされた独立した空間となっている訳ではなく、天井付近は吹き抜けとなっており、パーティションで区分けされた空間といった感じです。明るい色の木材とゴールドの装飾が、華やかで豪華な雰囲気を醸し出しています。

3号車

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 もともとあったセミコンパートメントの区画を利用したグリーン個室6室が並んでいます。1号車と2号車では、通路を片側に寄せることで個室の空間を広く確保していますが、3号車では、中央の通路の両側に個室が配置されており、さきほど乗車した「にちりんシーガイア」の座席と同じ構造となっています。また、ビュッフェスペースも広々としていました。

4号車

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 マルチカーとして、乗客であれば誰でも自由に利用できる空間となっており、ラウンジ的な役割を担っています。大型のモニターを完備しており、各種イベント開催時にも利用されています。「36ぷらす3」の車両の中でも特に開放感があり、広々とした空間が特徴的な車両となっています。なお、車端部には小規模なカウンターが設置されていましたが、今回は特に利用されていないようでした。

5号車

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 旅行商品購入者用の座席と、通常の特急券・グリーン券購入者向けの座席とで違いはありません。ただし、座席のモケット柄は分けられており、旅行商品用の区画の座席はすべて白地に青い植物柄のもので、通常のきっぷ類で購入できる区画には、緑や黒などの柄の座席がランダムに配置されていました。モバイルコンセントや座席回りの設備はすべて共通のようです。

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 ちなみに僕が利用したのは、5号車の1人掛け座席です。予約する時点では、6号車の1人掛け座席にも空席があり、お座敷列車のような畳敷きの車両も面白いかなと思いましたが、号車外への移動の都度、靴を履いたり脱いだりするのも面倒だなと考え、あえて5号車の方を選びました。観光列車にありがちな窓枠と座席位置が一致しない"ハズレ席"はなく、窓側の席であれば、どの席からも同じ眺望を楽しむことができます。ただ、ちょっと残念だったのは、窓には左右に動かすことができる障子が取り付けられており、せっかくの外の景色を窓半分しか眺めることができなかったことです。

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 車内では、アテンダントさんから直接、「36ぷらす3」青の路のリーフレットをいただきました。沿線の見所や、35のエピソードのうち青の路にある5つのエピソードが紹介されています。また、「36ぷらす3」の車内には乗車記念スタンプがあり、また、途中の杵築駅門司港駅にも、36ぷらす3専用のスタンプが用意されているとのことで、リーフレットの中には、これらのスタンプを押印するための箇所もありました。

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 「36ぷらす3」青の路では、途中の門司港駅で約40分の停車時間が設けられており、乗客は改札を出て駅周辺の散策を楽しむことができます。門司港駅は近年、大規模な改修工事が行われ、ネオルネサンス様式の建設当時の姿によみがえりました。駅前には噴水があり、「36ぷらす3」の到着にあわせて作動するという催しもあり、多くの人がカメラを向けていました。また、門司港駅のホームの端には、昔の腕木信号機とともに季節の花が植えられており、「36ぷらす3」の美しい車体に花を添えていました。

 門司港を出発すると、次は小倉に停車します。僕が乗車した5号車のうち通常のきっぷ類で購入できる区画には、始発の大分とその次に停車した別府からの乗客が5人程度乗車していましたが、僕を除く他の乗客は、小倉で下車しました。小倉から先、終点の博多までは僕1人だけかなと思っていたところ、小倉から数人が乗車してきました。短区間だけ「36ぷらす3」に乗車される方がいることにちょっと驚きましたが、それだけ「36ぷらす3」の人気があるということなのだと思います。

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 今回使用した「にちりんシーガイア」と「36ぷらす3」の乗車券と特急券です。ついでに参考として、九州までの往復に利用した「のぞみ」の乗車票も紹介しておきます。博多→大分間の「ソニック」「にちりんシーガイア」には、九州ネット早特3の設定があり、JR九州のインターネット列車予約サービスを利用することでおトクに乗車することができます。一方で大分→博多間の「36ぷらす3」にはネットきっぷの設定はなく、さらに「36ぷらす3」用のグリーン料金が適用されるため、博多→大分間の「にちりんシーガイア」が2,550円だったのに対し、大分→博多間の「36ぷらす3」は9,450円となりました。しかし、実際に乗車してみると「36ぷらす3」の満足度は非常に高く、この値段に見合うだけの価値は十分にあると思います。今回は、前日に「或る列車」に乗車してちょっと贅沢をしてしまったため、「36ぷらす3」には通常の特急券とグリーン券で乗車しましたが、次回乗車する際には、昼食付きのランチプランを利用し、車内でのちょっと贅沢な食事も楽しんでみたいと思います。