レン鉄★気ままな乗車記

乗り鉄&きっぷ鉄の管理人が、備忘録を兼ねてブログに綴っていきます。

乗り鉄&きっぷ鉄っぽい管理人が、乗り鉄旅行とそこで使用したきっぷを思うがままに記録したブログです。
どうぞ、お付き合いください。
 

2つの観光列車とSLに乗車する九州乗り鉄旅(2)~或る列車編~

 前回の記事からの続きです。

 鳥栖で「SL人吉」を下車した後、快速列車で博多に戻りました。ここからはいよいよ、今回の乗り鉄旅での最大のイベントである“JR KYUSHU SWEET TRAIN「或る列車」”に乗車します。「或る列車」に乗車するためには、専用の旅行商品を購入する必要があり、僕もあらかじめ専用のWebページから申し込みを行っていましたが、出発日の数日前、ツアーデスクから行程表などの必要書類が送られてきました。それを見ると、博多駅の発車時刻は14:58で、入線後の14:36頃より乗車できるとの案内がありました。できれば発車前に、「或る列車」の外観を撮影したいと思い、少し前に乗車場所として指定された7番線に向かうと、ほどなくして金色に輝く2両編成の気動車が入線してきました。

 ここで話しがそれますが、僕が「或る列車」に乗車したいと思うようになったきっかけについて、少しだけお話ししたいと思います。「或る列車」は、2015年8月に運行を開始した列車で、僕も以前からその存在は知っていましたが、JR九州の中では「ななつ星in九州」に次ぐ豪華列車で値段が高く、また、人気列車で予約も取りづらいと聞いていたため、つい最近まで、実際に乗車することはあまり考えていませんでした。しかし、昨年11月の四国乗り鉄旅で「四国まんなか千年ものがたり」に乗車して以降、単に乗車するだけでなく、車内で食事を楽しむことができる列車に魅了され、それからは、実際に「或る列車」にも乗車してみたいという思いが強くなりました。そこで思い切って奮発し、今回の乗り鉄旅で乗車してみることにしたという次第です。

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 送られてきた行程表に記載されていた「或る列車」の時刻表は、上のとおりです。ちなみに「或る列車」には、時期によって様々な運行ルートがあり、固定された定期運行路線はありません。代表的なルートとして、大分⇔日田間の「大分コース」、佐世保⇔長崎間の「長崎コース」があり、その一つとして、今回乗車する「ハウステンボスコース」(ハウステンボス⇔博多間)があります。定期運行されている特急列車であれば、約1時間50分で移動できる距離ですが、「或る列車」は約3時間かけてハウステンボスを目指します。

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或る列車で使用されているキハ47形:博多駅鍋島駅ハウステンボス駅 2021/9/11

 行程表では、始発の博多から終点のハウステンボスまでの間に停車駅は設定されていないように見えますが、実際には数回の運転停車があり、さらに鍋島では扉扱いがあり、乗客がホームに降りて、写真撮影を楽しむことができる時間が設けられていました。ということで、博多とハウステンボス、それに鍋島で車両の外観をいくつか撮影することができました。

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 「或る列車」の車両を直に見るのはもちろん初めてですが、とにかく豪華で煌びやかです。車両自体は、国鉄時代のキハ47形気動車を改造して製作されたもので、種車の面影が強く残されていますが、外装色は金色で、これに細かな唐草模様があしらわれています。ちなみにこの唐草模様ですが、車両前面下部の箇所をよく見ると、塗装ではなく、金属板を唐草柄に加工したものが取り付けていることが分かります。車両全体を眺めて見ると、まるで一つの芸術作品にように感じられ、何だか近寄りがたいような、別世界から来た特別な車両といった感じがしました。側窓上部に飾り窓を模したアーチ状の装飾が施されている点や、客用扉の窓にステンドグラスが取り付けられている点も特徴的で、細部に至るまで実に精巧に飾り付けられていました。

 ちなみに、2両編成のうち、1号車がキロシ47-9176、2号車がキロシ47-3505となっています。どちらも、気動車を表す「キ」、グリーン車を表す「ロ」、そして食堂車を表す「シ」が付けられており、JRの車両としては大変珍しい形式記号となっています。

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1号車の車内

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1号車の2人用テーブル座席

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1号車の4人用テーブル座席

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2号車の車内

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2号車の1人用個室

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2号車の2人用個室

 続いて車内の紹介です。外観の美しさにも驚かせられましたが、車内に入ると、まるで高級ホテルのラウンジに案内されたかのような、華麗で優雅な空間が広がっていました。この「或る列車」をデザイン・設計したのは、あの水戸岡鋭治氏で、「或る列車」以外にも、JR九州の様々なD&S列車のほか、富士急行8500系「富士山ビュー特急」や、京都丹後鉄道のKTR8000形「丹後の海」などを手掛けたことでも有名で、「或る列車」の車内からも、こうした車両に似た“水戸岡テイスト”の雰囲気が感じられましたが、やはりそれらの中でも「或る列車」は別格といっていいと思います。

 なお、1号車と2号車では座席設備に違いがあり、1号車は2人用と4人用のテーブル座席が配置された開放的な空間となっているのに対し、2号車は中央の通路を挟んで左右に1人用と2人用個室(コンパートメント)が並んだプライベート感の高い空間となっています。また、内装に用いられている木材にも違いがあるようで、1号車には明るい色調のものが、2号車には濃い色調のものが使われており、それぞれの世界観を表現しています。

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 今回、僕は1人利用で申し込んだ訳ですが、1人利用の場合、①1号車の2人用テーブルを1人で利用、②2号車のうち1人用個室を利用、③2号車のうち2人用個室を1名で利用、の3つの利用方法があります。申し込み時点では、どれも空きがありましたが、旅行代金を見ると、①と③は38,000円、②は32,000円となっており、1人用個室の利用が最も安価だったため、これを利用することにしました。Webページから申し込みを行った際には、具体的な座席の写真を見ながら申し込みを行うことができるように工夫されていました。1人用個室は2室しかなく、ほとんど差異はないようでしたが、例えば2人利用の場合には、個室位置による窓配置の違いなども見比べながら、座席を選択することができるというメリットがあります。

 今回乗車する「或る列車」の料金は、すでに紹介しましたが、正直言って結構な値段です。例えば東京-新青森間で「はやぶさ」のグランクラス(飲料・軽食あり)を利用した場合の正規運賃・料金は27,620円(通常期・片道)なので、単純な比較はできませんが、「或る列車」の方が4,000円以上も高いということになります。それでも「或る列車」は非常に人気があり、特にコロナ禍以前は、なかなか予約が取れない列車と言われていました。かなり高額な価格設定にも関わらず、多くの方の人気を集め続けた理由、それはやはり、車内で提供される数々のスイーツの魅力にあるのではないかと思います。

 「或る列車」は、正式名を“JR KYUSHU SWEET TRAIN「或る列車」”と言い、その名のとおり、スイーツを中心とするコース料理が車内で提供されます。「或る列車」で提供される料理は、東京の南青山にある“NARISAWA”のオーナーシェフが監修したものということで、グルメ全般に疎い僕ですが、何となく、南青山の有名なシェフが手がけた料理と聞いただけで、自然と気分が高まってきました。

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 まず始めにいただくのは、NARISAWA“Bento”~「野山の錦」~というもので、3種類の料理が、お弁当箱に見立てた小箱に入れられて、あらかじめテーブルに用意されていました。食事が始まりしばらくすると、今度は温かいスープが提供されます。普段はなかなか味わうことができない美味しいものばかりで、また、量的にもちょうどいい感じでした。

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 食事が終わると、ここからは各種スイーツが4回に分けて提供されます。普段は乗り鉄旅の中で、列車の写真ばかりを撮影していますが、今回は、めったにお目にかかることができないスイーツをいただけるということで、記念に一つ一つのスイーツを写真に収めました。上の写真は、それぞれ提供されたデザートを順に撮影したもので、一番上の写真がカクテルスイーツ、その次がスープスイーツ、そしてメインスイーツと続き、最後にミニャルディーズという小さな洋菓子が提供されました。メニューには、それぞれのスイーツについて、さらに詳しい説明が記載されていましたが、どれも初めて見るものばかりで、これまで食べてきたスイーツとは、一味も二味も違うような気がします。どれも見た目に美しく、もちろん、実際に口に運んでみると味も上品で、期待を裏切らないものばかりです。「或る列車」の雰囲気にもマッチした、素敵なスイーツコースとなっていました。

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 ちなみに「或る列車」の車内では、飲み物類は一部のアルコール類を除いて、フリードリンクとなっており、好きなものを好きなだけ注文することができます。普段はアルコール類をほとんど飲むことがない僕ですが、今回はせっかくの機会ということで、ソフトドリンクだけでなく、久しぶりにスパークリングワインもいただきました。

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 乗車時には、最初の食事であるNARISAWA“Bento”とともに、コース料理のメニューと記念乗車証が、テーブル上に置かれていました。A4サイズを2つ折りにした見開きタイプのもので、中には「或る列車」の車内装飾や、コース料理で使用されている器を製作された職人さん達が紹介されています。「或る列車」がこうした魅力的な列車として確立するまでには、列車の改造作業に携わった方、車内の調度品の製作に携わった方、車両で提供される料理を監修された方、そして客室サービスを担当するアテンダントの方まで、様々な方面の方々による協力があったことを実感することができました。

 なお、普段であれば、乗車時に使用したきっぷ類を紹介するところですが、「或る列車」が旅行商品専用の団体専用列車であるため、一般的なマルス券のようなきっぷ類はありません。

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 今回乗車した「或る列車」では、単なる乗り鉄の枠を越えた、ワンランク上の列車の楽しみ方というものを、感じることができました。そもそも「旅」とは、その人にとっての非日常であり、心の満足感を充足してくれるものです。鉄道好きの僕にとっては、もちろん「或る列車」に乗車することができたことだけでも十分に価値がありましたが、豪華な車内で味わうスイーツや、アテンダントさんによる決め細やかなサービスにより、至福のひとときを過ごすことができました。普段の乗り鉄旅の何倍以上もの幸福感に包まれたような感じがして、この記事を書いている今でも、乗車時のことを思い出すたびに幸せな気持ちになれる、そんな素敵な列車でした。

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みどり号で使用されている783系:博多駅 2021/9/11

 ハウステンボスから早岐に戻って、ここからは今回の宿泊地である博多に向かいます。ハウステンボスから博多に向かう特急「ハウステンボス」は午後4時台に終了しているため、早岐から特急「みどり」を利用します。車両は783系で、特急「ハウステンボス」と併結したり、特急「みどり」単独で8両編成で運転されることが多いですが、僕が今回乗車した「みどり28号」は4両編成のみでの運転でした。(ハウステンボス号を併結していないため、5号車から8号車までの扱いとなっています。)

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 以前の九州乗り鉄旅で、同じ783系のハウステンボス仕様の車両に乗車したことがありますが、オリジナル仕様(?)の783系に乗車するのは初めてです。JR九州誕生直後に登場した車両ということで、車内設備にもやや古さが目立ちますが、座席はソファーのようにフカフカで、最近の車両にはない座り心地でした。

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 特急「みどり」の乗車には、九州ネットきっぷを利用しました。JR九州のインターネット列車予約サービス限定で発売されているきっぷで、早岐ー博多間の場合、指定席利用の正規運賃・料金が3,950円であるのに対し、ネットきっぷは2,350円(指定席・自由席同額)で購入することができます。九州ネットきっぷは、当日予約も可能で、受け取り前であれば、利用日や列車を変更することも可能です。また、設定区間も多く、うまく利用すれば、かなりおトクに九州内での乗り鉄旅を楽しむことができそうです。

 特急「みどり」で博多に到着した後は、予約していたホテルに向かいます。今日は最寄り駅から始発の電車に乗車して、ここまでほぼ休みなしに乗り鉄旅を続けてきました。ホテルでゆっくりと休み、2日目の乗り鉄旅に向けて英気を養いたいと思います。

 >>(3)~36ぷらす3編~に続く