レン鉄★気ままな乗車記

乗り鉄&きっぷ鉄の管理人が、備忘録を兼ねてブログに綴っていきます。

乗り鉄&きっぷ鉄っぽい管理人が、乗り鉄旅行とそこで使用したきっぷを思うがままに記録したブログです。
どうぞ、お付き合いください。
 

「あめつち」に乗車する山陰乗り鉄旅

 お盆休みが終わり、8月も後半になりました。世間には、8月7日(土)から15日(日)まで9連休という会社もあるようですが、僕の職場は基本的にカレンダーどおりの勤務となっているため、お盆休みというものはありません。コロナ禍以前、お盆休みといえば、新幹線の指定席が軒並み満席となり、指定席を確保できなかった人達によってデッキや自由席車両の通路が埋め尽くされる光景が、毎年のように繰り広げられていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によって状況は一変し、昨年は、帰省や旅行で新幹線を利用する人が大幅に減少しました。JR東海が公表した2020年のお盆期間の利用状況は、東海道新幹線全体で前年比24%(つまり76%減)という、過去に例のない衝撃的なものでした。報道によると、今年のお盆期間の新幹線利用客は、過去最低だった昨年を上回るものの、コロナ禍以前の水準には遠く及ばず、例年のような大きな混雑はなかったとのことです。混雑がないということは、一見すると、利用者側にとってメリットだと思えるかもしれませんが、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の影響による利用低迷がさらに長期化すれば、JR側としても、定期列車の臨時化や減便などに踏み切らざるを得ない状況になるでしょう。これは、利用者側にもJR側にとっても決して望ましいものではありません。ワクチン接種が順調に進み、当たり前の日常を少しでも早く取り戻すことができるよう、そして、鉄道業界がこの窮地から脱却できるよう、一鉄道ファンとして、ひたすら願うばかりです。

 さらに今年のお盆期間は、こうした状況に追い討ちをかけるように、九州や中国地方を中心に日本各地で猛烈な大雨が数日間にわたって降り続けるという、異常気象の連続でもありました。この大雨は、鉄道にも大きな影響を及ぼし、特に北九州地区や広島地区では、数日間にわたって列車の運休を余儀なくされ、また、久大本線佐世保線呉線中央西線飯田線など、西日本の路線を中心として、線路の冠水や土砂の流入、橋桁の損傷など、大きな被害が発生し、今でも不通となっている区間があります。

 実は今回、僕は8月21日・22日の2日間の予定で、九州D&S列車乗り鉄旅を予定していました。以前の記事でも紹介したとおり、当初は6月下旬に予定していた乗り鉄旅で、前々から憧れていた「或る列車」に乗車するというものでした。先週末くらいから、佐賀や長崎で大雨が降り続いているというニュースを見た時、ひょっとして運休になったりしないかと心配していましたが、その悪い予感が的中し、16日になって「或る列車」のツアーデスクから運休の連絡がありました。自然災害によるものであり、誰が悪い訳でもないため、こればかりは仕方ありません。とはいうものの、せっかく確保した乗り鉄旅のための2日間を無駄にするのは、あまりにもったいないため、旅行の目的地を急遽、山陰地方に変更し、まだ乗車したことがない観光列車「あめつち」に乗車する乗り鉄旅に出かけることにしました。その旅行行程は、次のとおりです。

8月21日の旅行日程

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8月22日の旅行行程

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 「あめつち」に乗車するに当たって、まずは、下り列車(鳥取出雲市)と上り列車(出雲市鳥取)のどちらにするのか選択する必要がありますが、今回は、下り列車に乗車することにしました。下りの「あめつち」の鳥取駅発車時刻は午前9時ちょうどということで、必然的に前泊が必要となりますが、調べてみたところ、金山から鳥取まで、普通(快速)列車を乗り継いで10時間程度で移動できることが分かりました。現在は青春18きっぷ利用可能期間ということで、2日間の乗り鉄旅のうち1日目は、青春18きっぷを利用してこの区間の移動に充てることにしました。1日に乗車する全区間青春18きっぷだけで旅行するのは、相当久しぶりのことです。

 今回の旅行行程を作成する際にあらためて気がついたのですが、京都から鳥取まで山陰本線で移動する場合、途中の園部、福知山、豊岡、浜坂の各駅で乗り換えが必要になることが多い中、その間での乗り継ぎがあまり考慮されていないのか、時間帯によっては、かなりの待ち時間が生じてしまうダイヤとなっていました。今回の旅行行程は、その中でも数少ない好条件で乗り継ぎが可能なパターンで、こうした行程を見つけ出すためには、やはり紙の時刻表が便利だなと実感したところです。

 続く2日目には、旅のメインである「あめつち」に乗車します。今回は、始発の鳥取から終着の出雲市まで、「あめつち」の全区間に乗車することになります。出雲市で「あめつち」を下車した後は、岡山まで特急「やくも」に乗車し、岡山から名古屋までは新幹線を利用します。なお、乗車券類の都合上、途中の新大阪で乗り換えることとし、山陽新幹線区間では「さくら」に、東海道新幹線区間では「こだま」に乗車します。中でも「やくも」と「さくら」に乗車するのは久しぶりで、こうした列車に乗車できるという点も、今回の乗り鉄旅での楽しみのひとつとなります。

 1日目の普通(快速)列車の乗り継ぎ旅は、東海道本線山陰本線をひたすら西に向かうものになりました。最近は天候不順が続いており、突然の豪雨により列車の運休や大幅な遅延が発生してもおかしくない状況でしたが、曇天の中で、何とか1日目の移動を無事に終えることができました。青春18きっぷシーズンということで、特に運転本数が少ない山陰本線区間での混雑を心配していましたが、一部の区間を除けば、十分に着席できるだけの余裕があり、のんびりとした乗り鉄旅を楽しむことができました。今回は、途中下車することなく鳥取まで移動しましたが、また機会があれば、途中の餘部橋梁や城崎温泉に立ち寄る旅もいいかなと思いました。

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あめつち号で使用されているキハ47形:米子駅松江駅 2021/8/22

 1日目の話題はこれくらいにして、さっそく2日目に鳥取駅から乗車した「あめつち」を紹介します。車両は、キハ47形気動車による専用車両(2両編成)で、JR西日本によくある国鉄気動車を改造して製作された観光列車です。2018年7月から9月までの期間に開催された「山陰デスティネーションキャンペーン(山陰DC)」に合わせて運行を開始したもので、運行開始からちょうど約3年が経過したところです。ちなみに列車名の「あめつち」という愛称ですが、これは『古事記』にある「天地(あめつち)の初発のとき~」に由来するものだそうです。『古事記』には山陰地方の神話が多く収録されているということを、初めて知りました。

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 車両の外観を見てみると、一般形車両であった頃のキハ47形気動車としての面影がそのまま残っていますが、カラーリングは鮮やな紺碧色に変更されており、また、側面下部には、山陰の山並みと日本刀の刃文を表現したグレーとシルバーの模様が描かれています。確かに神話の世界を連想させるもので、列車のコンセプトが見事に表現されていると思います。

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 ここで、今回乗車する下り列車のダイヤを紹介します。途中の停車駅は、倉吉、米子、安来、松江で、鳥取から島根にかけての沿線にある主要駅に停車していきます。鳥取から出雲市まで、特急「スーパーおき」や「スーパーまつかぜ」では約2時間ですが、「あめつち」はこれらの特急よりも停車駅が少ないにも関わらず、約3時間半かけて走ります。車両性能の違いによるところもありますが、途中には徐行運転区間も設定されており、観光列車らしいゆったりダイヤが組まれています。

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1号車の車内

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2号車の車内

 1号車、2号車とも、座席配置に大きな違いはありません。座席は3つのタイプに分かれており、窓側向きの1人掛けカウンター席、2人掛けのテーブル付き座席、4人掛けのテーブル付き座席で、観光列車ではよく見かけるものです。8月上旬に乗車した「etoSETOra」では、1号車と2号車で座席のモケット柄が異なっていましたが、「あめつち」では1号車、2号車とも共通で、グレーのモケット柄の座席にあめつち専用のヘッドカバーが取り付けられていました。

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 車内には、地元山陰の工芸品が多用されており、特に目につきやすい箇所では、天井の照明部分には鳥取県の因州和紙が、テーブルの装飾には島根県の石州瓦が使用されています。特に照明のシェードの役割を担っている因州和紙は、1号車と2号車で異なる色が使用されており、トンネル内で車内が暗くなると、その美しさと鮮やかさが一層引き立つ感じがしました。

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 2号車の連結部寄りには、物販カウンターが設置されています。車内限定販売のオリジナルグッズやお菓子などを販売していました。ちなみに今回乗車した「あめつち」は乗客が少なく、僕が利用した2号車は、途中駅での乗降を含めても5人程度でした。1号車の方にはもう少し乗客がいたようですが、全体的には空席が目立ち、物販カウンターを利用する方も少ないようで、ちょっと寂しい状況でした。

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 観光列車によくある乗車記念証の類はありませんでしたが、車内には車窓手帖なるものがあり、車窓からの見どころがしっかりとイラスト入りでまとめられています。観光列車では、車内放送による沿線の紹介が行われることがありますが、どうしても聞き取りづらかったり、聞き逃してしまったりすることがあります。こうしたリーフレットがあれば状況が理解しやすく、また、持ち帰ることで乗車の記念にもなります。

 さらにもう一つ、あめつち手帖というものもあり、「あめつち」の魅力やその背景となる様々な神話や伝説が紹介されており、これを見れば「あめつち」の全てがわかると言っていいほど、充実したパンフレットになっていました。JR西日本米子支社の「あめつち」に対する強い思い入れが伝わってきます。

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 今回の旅行行程を作成したのは、出発日の直前だったため、「あめつち」の指定券を購入したのも乗車日の5日前でした。その時点では、いつものように1人掛けカウンター席を利用しようと考えて、一旦は座席を確保しました。しかし、乗車日の前日になって急に気が変わり、もし空きがあれば、2人掛けのテーブル付き座席に変更しようと思い直し、当日の出発直前に鳥取駅のみどりの窓口で確認したところ、希望していた2人掛けのテーブル付き座席にちょうど空きがあったため、これに変更しました。以前の記事でお話ししましたが、観光列車には座席位置と窓割が一致していないハズレ席が存在することが多く、それは「あめつち」も例外ではありません。それどころか「あめつち」では、座席位置と窓割が一致しない席の方が多く、また、かろうじて窓枠に近い位置にあるような座席でも、窓枠の桟が邪魔をして、車窓を眺めるには不向きな座席が多数を占めています。その中でも数少ない好条件の座席は、1人掛けカウンター席であれば1号車4Dまたは2号車12Aで、2人掛けのテーブル付き座席であれば1号車3A、2号車9Dといったところでしょうか。ただし、鳥取出雲市の下り列車の場合の1号車3Aと、出雲市鳥取の上り列車の場合の2号車9Dは、進行方向に背を向けることになりますので、注意が必要です。

 今回の乗り鉄旅では、旅行行程のところでお話ししたとおり、381系「やくも」と、山陽・九州新幹線仕様のN700系にも乗車しましたので、こちらも紹介します。

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やくも号で使用されている381系:出雲市駅 2021/8/22

 「やくも」は、山陽本線伯備線山陰本線を経由して岡山-出雲市間を結んでおり、今回は始発の出雲市から岡山までの全区間で乗車します。令和となったこの時代にも、昭和生まれの国鉄型特急である381系が使用されています。

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 JR東日本の特急「踊り子」が185系からE257系2000番台に置き換えられた今、国鉄時代の車両が現役の特急列車として使用されている唯一の運用となっています。さすがに製造当初のままということはなく、内外観ともリニューアルされており、座席も最近の特急形車両と同じものに交換されていますが、車齢はかなりのもので、引退も近いと聞いています。僕が「やくも」に乗車するのはちょうど3年ぶりですが、普段はなかなか乗車する機会がないため、ひょっとすると、今回の乗車が最後になるかもしれません。

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500系と並んだN700系岡山駅 2021/8/22

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山陽・九州新幹線用のN700系新大阪駅 2021/8/22

 続いて乗車したのは、N700系8両編成による「さくら」です。博多方の1号車から3号車までが自由席で、4号車から8号車までが指定席(6号車の半室はグリーン車)となっています。東海道新幹線用のN700系16両編成では、普通車の座席は自由席と指定席で同じものが使用されていますが、山陽・九州新幹線用のN700系では、普通車の指定席は「2列シート&2列シート」となっており、自由席との差別化が図られています。

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 普段、東海道新幹線に乗り慣れている僕からすると、「2列シート&2列シート」はとても羨ましく、指定席料金を追加するだけでこの座席を利用できるのであれば、なにもグリーン車に乗車する必要はないのではないかと思ってしまうほどです。今回は45分程度の短い乗車でしたが、機会があれば、新大阪から終点の鹿児島中央まで、N700系の「さくら」に乗車してみたいものです。

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 帰路では、出雲市から岡山まで「やくも」と、岡山から新大阪まで「さくら」に乗車しましたが、この乗車にぴったりな特別企画乗車券がJR西日本から発売されており、今回はその「新幹線&やくも 早得3」というきっぷを使用しました。このきっぷは、「やくも」でも山陽新幹線でも普通車指定席が利用でき、山陽新幹線区間では「のぞみ」を利用することもできます。JR西日本のトクトクきっぷによくあるような2名以上の縛りはなく、また、片道のみの利用も可能です。これだけ見ても、かなり利用価値の高いきっぷだということが分かりますが、さらに魅力的なのはその値段で、出雲市ー新大阪間の場合、ちょうど5,000円です。正規運賃・料金で同じ区間を利用する場合、「のぞみ」利用の通常期で11,340円なので、半額以下で乗車することが可能です。ちなみにこのきっぷは、乗車日の3日前までに購入する必要があり、また、数量限定となっているため、利用する際には注意が必要です。

 新大阪から名古屋までは、久しぶりに「ぷらっとこだま」を利用しました。値段は4,500円でした。新大阪発の上りの「こだま」は、基本的に1時間当たり1本しかないため、場合によっては新大阪で待ち時間が生じてしまうことがありますが、今回は「さくら」との接続がよく、ちょうどいいタイミングで「こだま」に乗車することができました。以前に「ぷらっとこだま」を通販で購入した際、郵送で乗車票が送られてきましたが、現在は新幹線乗車駅の指定席券売機で受け取ることが可能となっています。それからこの乗車票とあわせて、ドリンク引換券も発券されましたが、そちらは新大阪駅売店で使用してしまったため、手元には残っていません。

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 さて、今回の乗り鉄旅1日目で、青春18きっぷの3回目を使いました。あと2回分が残っており、当初は4回目以降も乗り鉄旅を予定していましたが、諸般の事情により、今季の青春18きっぷを利用した乗り鉄旅は、今回で最後となります(残り2回分の青春18きっぷは、金券ショップで買い取ってもらいました)。青春18きっぷを利用した乗り鉄旅は、これで一区切りとなりますが、機会を捉えて、引き続き夏旅を楽しみたいと思っています。